縮小するラブホテル市場

昔から景気に左右されず、不景気に強いと言われ続けて来たラブホテル、レジャーホテル業界で今、市場では何が起きているのでしょうか。

1. ラブホテル大廃業時代

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 警察庁が発表している統計「令和2年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締り状況等について」(令和3年5月)によると、性風俗関連特殊営業の届出数(営業所等の数)は、過去5年間は年間32,000件を挟み一定程度の水準で推移していますが、そのうち店舗型性風俗特殊営業は減少を続けています。

 その中でもとりわけ大きな減少になっているのが4号営業であるラブホテル・モーテルです。平成28年には5,670件の届出数がありましたが、令和2年には5,183件と5年間で487件も減少しています。実に1年間に100軒ものラブホテルが廃業した計算になります。

2. 廃業がすすむ背景とは

2-1. 飲酒運転の罰則強化

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2007年9月19日の道路交通法改正施行により飲酒運転の罰則が強化されました。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
(警察庁公式HP飲酒運転根絶より)

 モータリゼーションの発展と共に成長を続けてきたラブホテル業界では、一部の駅チカ、繁華街型の立地を除いては、多くが高速道路のインターチェンジの近くや人目につかない郊外に立地しており、車での利用が大前提となっています。また地方に行けば行くほど、車社会のため、買い物に行くのも食事にでかけるのも車を使用することは一般的です。

 飲酒運転は決して良いことではありませんが、罰則強化前の時代は飲酒をしてからも車を運転してホテルを利用する人が多くいたことが想像できます。罰則の強化後は郊外型ホテルでは売上が10〜20%程度減少することも珍しくはなかったのではないでしょうか。

2-2. 少子化と草食化

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 日本の人口の少子高齢化が進んでいることは誰もが知る事実ですが、特に少子化はあらゆる業界に影響を及ぼし、ラブホテル業界もその影響を避けることはできません。

日本がバブル絶頂期だった昭和60年代は、ラブホテルの利用層は第一次ベビーブーム世代と重なりピークとなる昭和24年生まれは270万人いましたが、第二次ベビーブーム世代(ピークは昭和48年生)では200万人、その後は減少を続け、現在のラブホテル利用層となる30歳代では、平成元年生まれを見ても125万人となっています。

厚生労働省公式ホームページ人口動態統計特殊報告より)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/syussyo-4/syussyo1-1.html

出生数を第一次ベビーブーム世代と平成元年生まれを比較しただけでも、54%も減少しているため、ラブホテルの利用者数も当然、減少していると言えます。ちなみに令和元年の出生数は初めて90万人を割り込み86.5万人となりましたので、今後ますます利用者層は減少を続けることになります。

この状況にさらに輪を掛けるのが、近年言われて久しい、若年層のセックスレス化と草食化です。フロントからお客様を見ていても最近では、若い方よりもご高齢の方が増えてきています。第一次ベビーブーム世代は70歳を超えて来ましたが、この世代の方たちはまだまだ元気なので高齢化についてはあまり問題ではないようです。

2-3. 価格競争と単価の減少

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 前述した利用者の減少により、ラブホテルの数は供給過剰となってしまい、必然的な市場の流れとしてホテル間での価格競争が始まります。20年ほど前は地方の郊外型ホテルであっても休憩5,000円、宿泊10,000円以上はしっかりと取ることができましたが、現在では地方に行くと平日の休憩は2,000円以下、宿泊も5,000円以下のホテルも一般的になりつつあります。

利用者数が減る⇒組数を増やそうと料金を下げる⇒それでも組数が増えないため更に料金を下げる。との悪循環が続いてしまいます。また近隣の競合ホテルは改装してきれいになり、内容も充実したのに料金は改装前と変わらないと言った事も珍しくないため、改装したホテルにお客様は流れてしまい、結果的に料金で対抗するしかないといった状況も発生しています。

ラブホテル・レジャーホテル業界では、ホテルの収益力を測る指標の一つとして1室あたり売上を用いますが、一昔前までは、地方での繁盛店の基準は1室あたり50万円と言われていましたが、最近では30万円でも頑張っている方だと言われるようになって来ました。

3. 廃業届の提出と閉店の関係

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 ひとつ注意しなければならないのは、警察庁が発表しているのは、あくまでも届出数ですから、4号営業の廃業届を出したからと言って、ホテル業自体を止めてしまったのかどうかは別の話になります。

 オーナー様であればご存知のとおりですが、ラブホテルは4号営業の届出とは別に旅館業法での許可を取得していますので、4号営業の届出要件に該当しなくなった場合は、廃業届を出したとしても、引き続き旅館業法を遵守していれば、ホテル、旅館としての営業が可能となります。そのため減少数が純粋に閉店数になるかは定かではありません。ただし、前述のようなケースは稀であるため、ほとんどが閉店を余儀なくされていると考えても差し支えないのではないでしょうか。

こうした様々な事情を背景に近年は減少を続けるラブホテル、モーテルの数ですが、収益を悪化させずに維持する方法はあるのでしょうか。ホテルを売却することなく、資産として保有し続ける有効な手段としての賃貸借契約契約とは、運営委託契約とはどのようなものでしょうか。

気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事を書いた人

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加藤 貴久

業界最大手のアイネグループに入社後、アイネより分離独立したRe・stayの設立に携わる。

Re・stayにて管理部門として財務・会計・総務に従事し、不動産証券化も担当、ISO事務局長として業界初の認証取得(9001/14001)を実現する。

業界歴は今年で20年を迎える。

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